3月のマンスリーゲスト 古知屋 恵子さん

インタビューを終えて

古知屋さんの作品を前にし 描く世界に出会うたび、ハッとして、そしてガツンと来るような衝撃を受ける。ご自身によると 人物を中心に据えた日常の何気ないひとコマを表現することが多いとのことだが、1枚の絵からストーリーが広がり、一瞬でタイムスリップするような感覚がある。あれ?私どこかでこの風景を見たはず、子供の頃かな、でも、いつ記憶から消えてしまったのだろう。そんな思いがよぎる。古知屋さんが作品とともに発する言葉、メッセージは、柔らかで温かな絵の表現とは対称的に時に強く鋭角だ。世界、社会、そして自分たちのあり方を問い直す内容に、ふと我にかえる。そうだよね…..ここに描かれている温かな日常のひとコマは当たり前ではなくて、自分たちのあり方、選択次第で記憶どころか本当に消えてしまう世界なのだろう。

古知屋さんはそうしたメッセージを描き、木版画や絵本、葉書や紙芝居、かるた等々様々なツールを通して、私たちの視覚に優しく訴え、時にシニカルに意識に問いかける。

展示会等で全国各地をまわる中での出会い、その土地に暮らすひとびとの日常を描く作品や旅のスタイルもまた興味深く、お話を伺いながら意識がスーッとチューニングされていくようで心地よく。

番組が放送される3月は東日本大震災から10年を迎えるとき。古知屋さんが世に出された「原発かるた」に出会ったのは、震災発生の数か月後、先の、出口の見えない不安感と同時にやりどころのない憤りも感じていた頃。10年経った今だから紡ぐことのできる言葉そして表現を古知屋さんは新しくかるたにして世に送り出す。「間に合えば…..」とおっしゃっていたソンべカフェでの展示には、見事に「間に合わせ」、渾身の新作をお披露目されている。

3月4日〜22日まで。10年前の「元祖」原発かるたと共に、ソンべカフェhttp://song-be-cafe.comにて是非ご覧いただけたらと思います。

番組でもご紹介した古知屋さんの絵本「ベルダの仕事」

*今回古知屋さんがご紹介くださった楽曲kurasikaの「写真」、番組では全編をon airすることができませんでしたが、是非こちらでお楽しみください。

0コメント

  • 1000 / 1000