7月のマンスリーゲスト 井関 妙子さん
インタビューを終えて
カフェ&ニットギャラリー「Cast on(キャスト オン)」のエントランスに立ち 店内を覗くと、華と品のある弾けるような笑みで、店主の妙子さんが迎えてくださる。ここから始まる豊かな時間のプロローグ。椅子に腰かけ、大きな窓越しに通りの往来を眺め、妙子さんが選んでくださる器でゆっくりとお茶をいただきながら、どこか見知らぬ土地に来ているような非日常感を味わう。言葉を交わしても、交わさずとも、この空間に今、たまたまご一緒している方々と同じ映画か舞台のシーンを共有しているような、そして、それは妙子さんによって紡がれているような不思議な感覚とそして安心感に包まれる。
お店が立地する北鎌倉のエリアにおいて、ハッと目を引く色遣いと佇まい。外観だけでなく、空間を構成する窓や壁の色、家具、器やカトラリー、テーブルの一輪挿しと隅々にまで店主の思いと感性が宿っている。もちろん、それはここでしかいただけない美味なるスイーツやこだわりのお茶にも。そして、空間を彩るニットの帽子やバックにも。同時に「Cast on」の魅力や存在感は、カフェという形態にとどまらない何かを放っていて、一人の店主が創る場の可能性の大きさに感じ入る。
今回 井関妙子さんとのご縁を繋いでくれたのは、妙子さんの前職時代のバリキャリぶりをよく知る 私の大切な友。開設当時、日本の介護環境に風穴を開ける存在と話題を集めたという施設「ヒルデモア」の執行役員、そして支配人として、現場で先頭に立っていた方が人生の次なる舞台としてオープンさせた処、そして友人の憧れの女性に自然と興味がむくむくと湧いてきて、初めましての感激もひとしお。また一人、素敵な方に出会ってしまったゾ。
「ヒルデモア」での介護の実際はデンマークをお手本に“not doing, but being”の理念にも基づいているという。介護者はできるだけ、日々の生活に手をださず、残存能力を精一杯引き出し、最大の配慮、目配りと最小限度の手助けに徹するのだという。
そして、番組でも妙子さんがお話しくださったように「ヒルデモア」という名前はアンデルセンが集めた童話に登場する「にわとこの木」に宿る「にわとこおばさん」に由来するのだとか。「にわとこおばさん」は人生の美しい思い出を語り合うお年寄りを讃え、応援し、そっと見守ってくれる存在なのだそう。
そんな「ヒルデモア」で多くの人生の物語に寄り添ってきた妙子さんだからこそ、「Cast on」での目配りや配慮、目の前の方との接し方、寄り添い方があるのだろうな。周りをそっと包み込むような柔らかな空気感と場のハーモニー。お一人お一人の「今日」をそして出会いを彩り豊かに編み上げているよう。
オープンから この秋で2年を迎える「Cast on」。世代を超えて愛される居場所として 地域での存在感を増している様子も伺えた。
北鎌倉を散策の折、西口から大船方面に2分ほど足をのばせば、すぐそこに。
ここにある豊かな時間にゆっくりと身を委ねてみてください。
Instagram @caston_kitakamkura
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