収録を終えて:
このタイミングだったんだ。
これまでご出演いただいたゲストの方との出会いの瞬間、そう感じることが幾度かあった。池田さんもそのおひとり。毎月、手にする鎌倉市の広報紙「広報かまくら」の表紙をはじめ、街のあちこちで目にするイベントのフライヤーやポスター、そのビジュアルやコピーにハッとするたび、その作り手のことがとても気になるようになっていた。
しばしの時を経て、ありがたきご縁から それが池田さんだとわかってからは、一気に謎解きが進む。これまでの制作の軌跡や、ブログで綴られている日々の所感から、池田さんの表現の軸にあるものに触れられたような感覚。そして、「応援するためのデザイン」とご自身の言葉で作り手としての想いを綴られている一節に出会い、心震えた。作られたものが自分ではない誰かの力になること。誰かを応援するためのアイデアと形と言葉。まさにその意思がデザインとして力を帯びて、こちらに伝わってくる。時に柔らかく、鋭く、じんわりと。そして「誰かの喜ぶ顔が見たい」というあり方は一番身近な存在、ご家族とのコミュニケーションにもあらわれていて。そこに宿る遊び心や思いやりが池田さんのブレない強さとやさしさを物語っているように思う。
時間の関係で全ての内容を放送することは叶わなかったけれど、こんなエピソードも。鎌倉のあるイベントで池田さんが制作したロゴやコピーから演出のアイディアが生まれたり、かたくなりがちな社会課題をテーマにしたイベント全体が「楽しみながら取り組む」という気運へと醸成されていった様子を伺うことができた。池田さんの表現、デザインは制作物としての発信という枠を超えて、イベントそのもののあり方をも創り出し、それがまた「面白がる」人々を介して、広がっていく様が伝わってきた。そのことが鎌倉の「多才で多彩」な人たちをつなぎなおし、新たな関係性をも生み出しているのではないだろうか。
当初は特に強い思い入れのある土地ではなかったという鎌倉に住まいを移してから、池田さんの暮らしのありようも大きく変化していったよう。薪や湧水を取り入れるところから始まり、暮らしの手間を愉しみ、味わいながら向き合っていらっしゃる様子が伝わってくる。好奇心から得た学びを確かな智慧に昇華していく姿勢にも揺るぎない力を感じる。ひとつひとつ、目の前のことに丁寧に向き合うことで初めて成し得ること。それは、池田さんのデザインにも通じるように思う。届ける先、相手への想像力の解像度が 人一倍高いからこそ生まれる表現。自然と向き合う暮らしの中で、研ぎ澄まされる感性によるところもあるのではないかな。
池田さんがこれから何を感じとり、それを丁寧に掬いあげ、手を動かし デザインし、歩みを進めていくのか。想像が及ばないからこそ、楽しみでならないのです。