収録を終えて:
穏やかな語り口と纏う空気から 知性と品格、ユーモアのセンスが伝わってくる。
伊東雅江さんとの初めましては、4年前の秋。小町のギャラリー一翆堂での絵画展だったと記憶している。やわらかな色彩とタッチで描かれるのは、鎌倉の情景、建物、そして動物たち。一つ一つの作品の背景にある思いやエピソードにふれ、その熱量とともに心動いたあの時のことは今も確かな手触りとして残っている。いつか番組でも伊東さんのお話をお届けできたら、とそれ以来何度かラブコールを送るなか 今回は念願のご出演が叶い、とても感謝している。
2月初旬、大船ルミネウィングで開催された「かまくらのすてきなたてもののえほん」展での再会は、私にとってまた特別な意味合いを持つものとなった。「かまくらのすてきなたてもののえほん」や「かまくらカレンダー」など 手にしたり 毎月楽しみに眺めるもの、その原画の力強さにも魅了され、放たれるエネルギーを浴びることができた。鎌倉の街の景色や建物でありつつ、どこかファンタジックな世界に誘われるのも伊東さんの発想や感性ならでは。さらにご本人から 描かれているものの物語を伺うことで、より奥行きをもって捉えることができた。
伊東さんの描く建物や情景が活き活きとした生命力を持つのは、そこに住まい、いらした方々との関係性があるからなのだろう。愛着をもって暮らしてきたその建物も、世が移り、難題も増えるなかで、なんとか守っていきたいと願う人の心が映しだされているからなのだと感じる。それは、伊東さんの文章、紡ぐ言葉にもあらわれている。すてきな建物を描くなかで生まれた数々のご縁、本当はもっともっと番組でもご紹介したいエピソードに溢れ、伊東さんの25年余に渡る取り組みの意味とその深さをおもう。
景観保全の活動も、声高に守ることを呼びかけるようなものではなく そこにあるものの美しさ、あたたかさや楽しさが柔らかな風のように感情を撫でて伝わってくることで、この景観を、建物を大切にしていきたい、とみるものを自然とそんな気持ちにさせるのではないかな。
北風と太陽。展示会で一つ一つの作品をじっくりと眺めている方々を拝見しながらそんな言葉が浮かんできた。
さて、「かまくらカレンダー」2026年4月、今月描かれているのは、今はなき小池邸。
昭和2年に医師・吉川春次郎氏の別邸として、建てられ、大正期に構想された「大船田園都市」の理念を色濃く残す存在、とのこと。絵と文章から、伊東さんが歩かれた「うららかな春の陽気」を感じながら、「今は亡き夢の街の痕跡」に思いを馳せてみてください。きっと胸のあたりが温かくなり、何か動き出したくなるような気持ちになると思います。